船橋リズムセンター

「野に在って野に下らず、俗に在って俗に流されず」。こだわりなし、怒りなし、浅く、ぶれつつ、無着陸、、、

「ジョアン・ペドロ・ロドリゲス レトロスペクティブ」で「ファンタズマ」を観た

3月のアテネ・フランセ川崎市民ミュージアムを皮切りに、大阪や京都へ行って、7月には再び東京はオーディトリウム渋谷に帰ってきて、9月には山口へ旅立つという、まあ、目まぐるしく動きながら、恐らく確実に変態メロドラマの衝撃を広げつつあるDotDash主催の「ジョアン・ペドロ・ロドリゲス レトロスペクティブ」、詳しい情報はこのブログよりもDotDashのHPを見た方がよいので、ここにリンクを貼りつけておいて

DotDash、ここから先は、こないだオーディトリウム渋谷で鑑賞してきた「ファンタズマ」についての感想諸々を書き綴ってみる。

 

「ジョアン・ペドロ・ロドリゲス レトロスペクティブ」に参戦したのは、6月の新文芸座でのオールナイトが初で、3月のアテネ・フランセやらでの上映の評判、主にtwitter経由での、を目にして興味を持ちながらも行きそびれて、機会があれば、と思ってたところにオールナイトイベント。ここで「オデット」「男として死ぬ」、中編「追憶のマカオ」、短編「紅い夜明け」「火は上がり、火は鎮まる」「羊飼い」を観たわけだけども、久し振りのオールナイトは身体的に相当きつく、始終うつらうつらし通しで、それでも長編2本はかろうじて観たと言えるまでには観通せたけども、後の作品はほとんど夢との区別がつかない状態で散々。

「オデット」は噂に違わぬ美しく、衝撃的で、変態な作品で、そして恐らくJ・P・ロドリゲスのフィルモグラフィ中では一番ポップで、間口の広い、というのは一般受けしそうな作品。

男が主人公だと、かなりハードなゲイムードが漂うので、「オデット」のように女が主人公の方が、一枚フィルターがかかる感じで観やすい、というのもあるんじゃないか。

でも「男として死ぬ」もなかなか面白かった。中年ドラァグクイーンの哀しくも滑稽なドラマ。胸からシリコンが出てきてしまうとか滅法哀しい…

他の作品については夢との区別がつかないので、それはそれで今にして思えば心地よい体験だった気もするが、何を観たのかすらもうよく覚えていない。

夜明けの市場、羊、アジアの路地…断片的、それも藻屑…

 

オーディトリウム渋谷でまたかかると知って「オデット」や「男として死ぬ」をもう一度観たいと思ったのだけども、オールナイトではかからなかった長編デビュー作の「ファンタズマ」も上演するというし、しかしあれもこれもすべてを観ることはどうにも叶いそうにない。

で、迷った挙句「ファンタズマ」を観に行くことにした訳である。


O Fantasma Trailer - YouTube

 

これがまたのっけからど変態なハードゲイ描写、いや、ヘテロセクシャルな人間にはゲイの絡みがすべてハードに映るのだろうか?

全身ラバースーツの男が、ガムテの猿轡をかまして後ろ手に縛りあげた体育会系若者を後ろから激しく責めている。

冒頭でガーンとショックを与えてくるのが、この監督のいわば作劇術のよう。

この映画はどんな映画なのか、非常に明快にオープニングで提示する。

 

あらかじめtwitterで「ち○こ」な映画だという情報を得ていたので、それが出てくるまでは怯まない。

 

ゴミ収集の仕事をしている青年セルジオは、行きずりの男たちに身体をゆるしたり、女友達にひどい仕打ちをしたり、犬と無邪気に戯れたりの無為な生活を送っている。そんな中、筋骨逞しい男子学生を見初め、一方的に恋慕の情を寄せ、犯罪まがいのストーキングを始める。やがて鬱積していた衝動が暴発し、野良犬として自らを解放していく。

このストーリーの紹介だと、最後の「野良犬として自らを解放していく」というのがどういうことなのかよくわからないだろうけども、まあ、しかしそういう作品なのである。

 

鑑賞直後の第一印象は「犬。犬の生活。犬として生きる」というものであった。

「ち○こ」はむしろ後景に。よっぽど「ピラニア3D」の方が「ち○こ」である、正しく。

 

セルジオははじめの登場から犬みたいに四つん這いで、臭いを嗅いで相手を見極め、歯でゴミ袋を噛み千切る。

憐憫を誘うような目で見てくるかと思えば、さかりがついたように性欲剥き出しの目で見てきたりもする。

彼がなぜそんな行為に出るのか、なぜ男子学生にこだわるのか、しかし彼の内面には一切降りていかない。

一人の人間というよりは、一匹の動物の生き様を見せられているような感じ。

 

それでもまだセルジオは鎖のついた犬なのである。仕事を持ち、女友達とセックスもする。社会性はかろうじて残っている。

ところが後半、黒の全身ラバータイツを身にまとい、逆説的にセルジオは解放へと向かうのである。

その先が明るかろうが暗かろうが、関係ない。

 

しかし、あんなど変態な格好で、堂々と犯罪行為をしたり、ゴミ焼却場(?)を彷徨ったり、もはや笑うしかないファンタジーの世界。

 

本作はジョアン・ペドロ・ロドリゲスの初長編作、自らの感性がとらえるものすべてを注ぎ込んで作り上げたと言わんばかりのエネルギーには満ち溢れている。ごつごつとした感触がたまらない。