船橋リズムセンター

「野に在って野に下らず、俗に在って俗に流されず」。こだわりなし、怒りなし、浅く、ぶれつつ、無着陸、、、

祝「ゼロシティ」DVD発売!〜ヴァラーキンは今も生きている!?

カレン・シャフナザーロフ監督、1990年製作のロシア(当時はまだソ連)映画「ゼロシティ」がなんとDVD発売!
マイカルトムービーの筆頭であったこの作品。またこうして観られる機会に巡り会うとは!
早速Amazonで購入。

ゼロ・シティ HDマスター [DVD]

ゼロ・シティ HDマスター [DVD]



学生時代、約20年前に初めて観て「なんじゃこりゃ!?」と思って以来、観直す機会がなく、自然発酵的にマイカルトとして熟してしまった作品。
こういうのを再び観るのは楽しみであるのと同時に、「実はそれほど面白くなかったのでは?」という危惧もある。


けれども、それは杞憂であった。


エンジニアのヴァラーキンは、仕事でとある町にやってくる。ところが呼ばれてきたのに先方の社長は「呼んでない」と言い、さらに立ち寄ったレストランではコックの自殺に遭遇し、参考人として警察に出頭しなければならなくなる。
事態はさらにややこしくなる。コックは自殺ではなく実は他殺で、ヴァラーキンに容疑がかかったり、この町で最初にロックを踊った男の息子であると町の人々に勘違いされたり…
町を出ようにもタクシー運転手は駅への道を間違える。
そうしてヴァラーキンは、町の住人の子ども(この子役が不気味ないい顔をしてる!)に「あなたはこの町を出られない。2015年にここで死ぬ」と予告される。


あな恐ろしき不条理つるべ打ち。
まるでカフカの「城」を彷彿とさせる。


全くのナンセンスなギャグ映画ではなく、1980年代半ばから後半のゴルバチョフ政権下のソ連の政治・社会を風刺している、ということがちょっと調べればもっともらしく解説されている。


なるほどロックは民主化の象徴で、市長や検事、作家、企業の社長といったある権力を持った人たちがこぞってロックに取り入り、歴史を改変しようと画策してるように見える。
けれどもその一方で、根の腐った大樹の枝を折っては、その枝をありがたがっている。
滑稽であり、かなりシニカルでもある。


ただ、そういうことがわからなくても、ヴァラーキンの悲しげな表情とあまりに不条理な展開だけでも楽しめる。
正直1980年代のソ連のことなんて、自分だってよく知らない。


ヴァラーキンが案内される歴史博物館のキッチュな展示物(俳優が蝋人形を演じている)も見物だし、ラスト近くヴァラーキンの泊まるホテルの一室に次々と権力者が訪れて間の悪い会話や歌を歌うシーンもニヤニヤするおかしさ。
f:id:kamonpoi:20131226132607j:plain


反体制の歌を歌っただけで投獄されてしまう国だから、ヴァラーキンが体験したような不条理な出来事も実際にあるかもしれない、と思わせなくもない。
そう、2015年に死ぬと予告されたヴァラーキンは、今もあの町から出られずに暮らしてるのかもしれない!
決して単なるギャグ映画ではなく、その中に真実も垣間見える。
味わい深い作品。