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船橋リズムセンター

「野に在って野に下らず、俗に在って俗に流されず」。こだわりなし、怒りなし、浅く、ぶれつつ、無着陸、、、

学園天国?な映画⑦〜「プリティ・イン・ピンク」「恋しくて」〜古典的な三角関係を爽やかな学園ラブロマンスに

ジョン・ヒューズは2009年夏、ジョギング中に心臓発作で亡くなった。まだ60にもなっていなかった。

しかし彼が監督を辞めてしまったのは、その死よりもずっと前のことで、1991年の「カーリー・スー」が最後の作品である。
それ以降90年代のジョン・ヒューズは、「ホーム・アローン」シリーズに代表されるファミリー向けコメディの脚本やプロデュースが活動のメインになる。
ということは何も私がしたり顔で書かなくても、よく知られている事実。
 
 
しかし80年代のジョン・ヒューズは、長谷川町蔵山崎まどか共著の「ハイスクールU.S.A. アメリカ学園映画の世界」によれば、たった6本の監督作で(内2本は脚本だけ書き、監督はハワード・ドイッチがしているが)、学園映画のフォーマットをほぼ一人で作り上げてしまった偉人ということになっている。

 

 

 

ハイスクールU.S.A.―アメリカ学園映画のすべて

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もうあと5年ほど早く生まれていれば、恐らく80年代のジョン・ヒューズ作品にリアルタイムに接することができたんだろうが、残念ながら当時はまだ「少年ジャンプ」の連載の方が気になる年頃だったし、クラスではみ出すこともなかったので、出会うチャンスがあっても共感はしなかっただろう。
そんなわけでこうして後追いで、薄れかけている記憶を手繰りながら、青春の甘酸っぱさとやらをほのかに嗅いでいるわけだ。
まあ、でも自分の青春にはこうした甘酸っぱさもなければ、男臭い友情もなかったような気がする。
過去のことはどんどん忘れる…
 
 
さて、学園映画を好んでよく観る割りには、古典とも、マスターピースとも言うべきジョン・ヒューズ作品を今まで疎かにしてきたので、今年はちゃんと観ようと思っている。
で、まずは「恋しくて」、それから「プリティ・イン・ピンク」と観てみた。

 

恋しくて [DVD]

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プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角 [DVD]

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この2本では、ジョン・ヒューズは脚本は書いているけども監督はしていない。前述のハワード・ドイッチが監督。
製作順でいけば、「プリティ・イン・ピンク」が1986年で、「恋しくて」が1987年。
で、この2本、製作した時期が近いだけでなく、話も非常によく似てる。
「プリティ・イン・ピンク」は、貧しい父子家庭のヒロインが、学園の人気者グループの富豪の息子に恋をするが、彼女には、彼女に密かに片思いする幼馴染みがいる、という三角関係を中心に描いてる。
これが「恋しくて」では男女が逆転して、絵を描くのが好きなパッとしない主人公が、学園の女王グループの1人に恋をするが、彼のことを密かに片思いする幼馴染みがいる、という。
 
 
ネタバレなんか気にしないので書いてしまうが、この2本で違うのは、オチである。
つまり、前者では階級差を越えてヒロインと学園の人気者が結ばれるけども、後者では主人公は幼馴染みと結ばれる。
で、どうやら「プリティ・イン・ピンク」でも、ほんとはヒロインと幼馴染みが結ばれるラストだったのらしいが、スタジオ側からの圧力かなにかで、理想の恋人と結ばれる方がハッピーエンドっぽいとかで改変を余儀無くされたのだという。
それで、その無念を晴らすかのように、「恋しくて」では「プリティ・イン・ピンク」で当初予定してたようなオチにしたとか。
曖昧不確かで申し訳ない。
 
 
ジョン・ヒューズのミューズであったモリー・リングウォルドが主演する「プリティ・イン・ピンク」は、彼女の独特なファッションとつんと口をとがらせた表情には確かに可愛らしさはあるものの、個人的にはどうもそれ以外に彼女に魅力を感じない。
むしろ彼女に密かに片想いする幼馴染みを演じたジョン・クレイヤーの方が、腹話術の人形みたいで愛嬌あって可愛らしい。ラスト、彼女を富豪の息子に譲ってしまういじらしさに胸が詰まる。
階級差のある恋愛というプロットは非常に古典的だけども、それを高校を舞台に、古臭くなく、軽やかに描いたところにこの作品のよさがある。
家族の問題(父の失業、母の失踪)、学内ヒエラルキー(金持ちと貧乏人)といった問題を、それほど深刻になるでもないが、描くことによって、アンディ(モリー・リングウォルド)とブレーン(アンドリュー・マッカーシー)の恋にピリッとした緊張感、アクセントを加えているのもよい。
前述の「ハイスクールU.S.A. アメリカ学園映画の世界」をまた引けば、この作品において高校生活におけるプロムの重要性が再びクローズアップされたのだという。
 
 
富豪のお坊ちゃまと結ばれるラストでもそれほど嫌味はなかったけれども、幼馴染みの恋情に気付いて最後にそれを受け入れるラストの「恋しくて」の方が、個人的にはずっとグッとくる。
「恋しくて」で、女王グループに属するアマンダ(リー・トンプソン)は決して高飛車な嫌な女でなく、むしろ女王グループに居心地の悪さを感じている根は優しい女の子なので、彼女とキース(エリック・ストルツ)が結ばれても悪くはない。
ただ、パンキッシュなショートヘアのワッツを演じたメアリー・スチュワート・マスターソンがあまりにかわいいので、なんとなく「彼女を捨ててはいけないという」感情移入しながら観てしまう。
ワッツが自らキースとアマンダのデートの運転手役を買って出るなんて、惚れずにはいられなくなってしまう。
そんな女心に気付かないキースの鈍感さときたら!
と、こんな風に思わせてしまう分だけ、「プリティ・イン・ピンク」よりもやっぱり肩入れしてしまうわけだ。
本作にも学内ヒエラルキー、そして進学問題などティーンの関心事がまぶされてて、単にラブロマンスでなく、しっかり学園映画の体裁も整えている。
勘のいい人は、役名からこの作品がローリング・ストーンズをネタにしているのがすぐにわかるらしいのだが、あいにくローリング・ストーンズは全く通過していないので、そういう楽しみがないのはやや残念と言えば残念か。
 
 
昨今の80年代ブームによる80年代の描き方はやたら能天気なものばかりが多い気がするけども、この2作に見られるハッピーエンドは決してそこまで能天気なハッピーでもなく、「よかったね」とつい声を出したくなるような慎ましやかさがあって、これってなかなか今じゃあ得難いのかもな、などと思ったりする。
 
 
最後に、「プリティ・イン・ピンク」で嫌味な金持ち野郎を演じたジェームズ・スペイダー(ボタン開け過ぎ)と「恋しくて」のショートヘアがキュートなメアリー・スチュアート・マスターソンの画像を貼って締めくくろう。
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