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船橋リズムセンター

「野に在って野に下らず、俗に在って俗に流されず」。こだわりなし、怒りなし、浅く、ぶれつつ、無着陸、、、

「ダラス・バイヤーズクラブ」を観た!〜これが待ち望まれるリアル・アメリカン・ヒーローなのか、と

先日の米アカデミー賞主演男優賞と助演男優賞をダブルで受賞した話題作、「ダラス・バイヤーズクラブ」を観てきた。
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エイズ患者を演じるために20㎏近く減量して臨んだという主演のマシュー・マコノヒーが、1月に観た「MUD」の時とはほとんど別人で、ほんとに病気なのでは?と疑いたくなるような痩せっぷり。
そこまでして入れ込んだ役だけあって、なるほど、マシュー・マコノヒーの演技を、というか鬼気迫る存在感を目の当たりにするだけでも劇場へ足を運ぶだけの価値はある。
助演男優賞を受賞したジャレッド・レトは、HIVポジティブで、ゲイで、ニューハーフで、ドラッグ中毒という、M.マコノヒーを上回る因果な役を、いじらしく、かわいらしく演じていて、これまた見応え十分。


ただ、正直僕は、この2人の圧倒的存在感を、こう言ったら失礼なのかもしれないが、見世物的に楽しみはしたものの、映画自体にはそれほど乗れなかったのだ。


実話ベースというのがあったからなのか、手持ちカメラ中心の映像には特に面白味がなかったし、なんだかテンポも一本調子、ハッとするような画もなかった。
あ、一箇所、蝶か蛾の飼われた部屋でロンが佇むカットは印象的。


1980年代半ば、エイズの脅威が米国を震撼とさせていた頃、エイズはゲイがかかる病気だという偏見を持っていた生粋の南部のカウボーイ、ロンは自分がその病にかかってしまう。
仲間や職場からはのけ者扱いされ、住んでいたトレイラーからも追い出される。
ロンはエイズについて調べるうちに、米国でエイズの特効薬として製薬会社が売り出そうとしてるAZTは副作用が強いことや、エイズの進行を抑えるのに効果のある薬が米国では無認可であることなどを知る。
そうして彼は、ゲイでやはりエイズ患者でもあるレイヨンを仲間に引き入れ、会費さえ払えば、無認可のエイズに効く薬を処方するという「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立。
やがて、エイズ患者相手に密輸した薬を配布する事業は、政府に睨まれるようになり、次第にロンは利権のために(またはエイズへの無理解のために)効果のある薬を認可しない政府と対立せざるを得なくなる。
といった話。
これが実話だという。


話は立派であり、感動的である。
エイズという当時は罹ったら最後必ず死に至る病に体を蝕まれながら、ロンは病気について独学し、ゲイへの偏見を改め、ドラッグを止め、国境を越えて薬を調達し、次第に多くの人から頼られるようになると、これこそ自分の使命とばかり、たった一人理不尽な政府へと立ち向かう。
それまでのロンときたら、セックスとギャンブルとドラッグに身を任せるその日暮らしをしていた、ろくでもない南部の荒くれ者にすぎなかったのに。


責任感や使命感によって人間的に成長する、一介の市井の人間が大きな敵を相手に戦いを挑む姿、これってまさにアメリカンヒーローの姿じゃないか!
そう、ここに描かれたロンは、蜘蛛の力もない、超人的な力を持った少女の相棒もいない、リアルなアメリカンヒーロー像を体現している。


と、アメコミヒーローものと括ってしまうと、なんとなく合点がいく。
この作品が今作られるということに。


アメリカは今アメリカンヒーローを待望してるのかもしれない。


アメリカンヒーローという言葉を出したら、アメリカンドリームという言葉を思い出したが、後者の方は最近めっきり耳にしない。
今は成功者よりも、"ザ・マン=大物"に立ち向かう戦うヒーローが望まれるんだろう。
とか。