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船橋リズムセンター

「野に在って野に下らず、俗に在って俗に流されず」。こだわりなし、怒りなし、浅く、ぶれつつ、無着陸、、、

「グランドピアノ」を観た!〜「嘘だろっ!?」を堂々とサスペンスに仕上げた傑作!

スペイン・アメリカ合作のシチュエーション・サスペンス、「グランドピアノ 狙われた黒鍵」を観てきた。

これが外連味たっぷりで素晴らしい!
映画って「嘘だろっ!?」てことを堂々とやられると、スカッと気持ちがいい。
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監督はエウヘニオ・ミラ、というスペイン出身の監督。
この作品でキーとなる「ラ・シンケッテ」というピアノ曲を作曲もしていて、音楽家の顔も持つらしい。
製作、第二班の監督に名を連ねるロドリゴ・コルテスが「レッド・ライト」の監督だというので、ともに70年代生まれ、この辺の横の繋がりにどういうムーブメントがあるのかないのか、よくわからない。
ちなみに「レッド・ライト」もかなり雰囲気のあるオカルトチックなサスペンスで惹かれたが、どうも後半乗り切れなかった…
そういえば、と思って今調べてみたら、70年代生まれでスペインから出てきた監督にはアレハンドロ・アメナバールという人がいたけども、僕はこの監督の作品はまるで観ていない。
 
 
 
話はこんな感じ。
天才ピアニスト、トム(イライジャ・ウッド)が5年のブランクを経てカムバックを果たす演奏の舞台上で、「一音でも間違えたらお前を殺す」との脅迫を受ける。
会場のどこかからライフルで狙われたトムは、果たしてこのピンチを切り抜けられるのか?脅迫者の本当の狙いは何なのか?
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演奏の真っ最中に命を狙われ、さらに会場で鑑賞している妻エマ(ケリー・ビシェ)にも魔の手が伸びる。
逃げ場はなく、誰の助けも借りられない、という状況でどうやってトムはこの難局を切り抜け、脅迫者を撃退するのか?
というサスペンスでグイグイ引っ張るのだが、正直結末はそれほどスカッとするものでもない。
(※ネタバレとか私は気にしない質なので、特に予告もなくポロポロ重要なことを書くかもしれない。書かないかもしれない)
 
 
それでもオープニングでピアノを運び出すシーン、鏡や写真立てのガラスの映り込みを使ったカットの「してやった感」、続いて怪しげな石像が映りバックの空に飛行機、タイトルがゴシックな雰囲気で厳かにポンと出て、さて飛行機に乗ってるのは主人公のトム、というこの一連の流れで充分心掴まれてしまう。
 
 
ヒッチコック風というより、ヒッチコックを真似たデ・パルマを真似てる、という感じで、とするとコンサートホールが主な舞台である本作は、デ・パルマの「ファントム・オブ・パラダイス」を想起せずにはいられない、とも言えるが、それを思いついたのはまさにいまであって、別段比べてとやかく言いたい気はしない。
それよりもコンサートホールの名前が「アンソニー・マイケル・ホール」というので、これはジョン・ヒューズへのオマージュなのか?それとも本当にそんな名のホールがあるのか?というのが気になる。
 
 
トムがホールに着いて楽屋へ向かうまでの長めのワンカット、舞台上の演奏と殺人シーンを同時に収めたスプリットスクリーン、ガラスの破片で女の首を切り裂こうとするまさにその時にチェロの弓を引くカットに切り替わる、などこうしたお遊びが下品にならずなかなかに楽しいのだ。
 
 
トムの妻エマを演じるケリー・ビシェが、お飾り的に映画を彩る以上ではない存在感として美しくあり続けるのもいい。
イライジャ・ウッドはそれほど"天才"ピアニストらしく見えないのだけども(ピアノよりも携帯の操作の方が超絶上手い!)、小さい身体ながら走り回り、困った顔して惹きつける。
楽譜が燃やされてしまい、動画サイトで検索した曲を聴きながら楽譜を起こす場面はなかなかスリリング。ここはグッとくる。
ただジョン・キューザックにはあまり意外性がなかった。チラシに出さない方がよかったんじゃないか?と。
 
 
トムとエマ夫婦の友人カップルが間抜けだったり、グランドピアノに隠された秘密が案外しょぼかったり(このために脅迫者は「ダイ・ハード」の敵役ハンスよりもチンケな悪党に成り下がってしまう)といったサスペンスを盛り下げるようなディテールがあるにはあるが、これもユーモアとポジティブに解釈!
 
 
とにかく至福の映画体験。
今のところ今年観た中では(といっても見逃してるのもたくさんあるが)3本の指に入る作品。傑作!