読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

船橋リズムセンター

「野に在って野に下らず、俗に在って俗に流されず」。こだわりなし、怒りなし、浅く、ぶれつつ、無着陸、、、

「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」を観た!

アメリカ 映画 コーエン兄弟
コーエン兄弟新作、これはぜひとも劇場で観なければ、と思いながら初日はおろか1週間経っても観に行けず、先週ようやく仕事を無理やり切り上げて鑑賞。


ここは初めて。
もう少し大きい劇場で観たかった…
ただ作品の規模的には案外84席くらいでちょうどよかった、とも。


これ、傑作。
いや、実は鑑賞直後は傑作という言葉はちょっと言い過ぎかな?という気もしたけども、余韻が長く続く。
おそらく観る度に浸透していく作品。
フォークミュージックやボブ・ディランに造詣なんかなくても十分楽しめる。
ルーウィンのモデルとなったデイヴ・ヴァン・ロンクの回想録読むと、また味わいが違うらしいが、まあ、いずれ読んでみたい。

グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃―デイヴ・ヴァン・ロンク回想録

グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃―デイヴ・ヴァン・ロンク回想録



60年代ニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジ。フォークミュージックブーム前夜。ボブ・ディランに影響を与えたという伝説のフォークシンガー、デイヴ・ヴァン・ロンクは才能はありながらも、人徳がなくどん底の生活を余儀無くされていた…
上記の回想録にインスパイアされてコーエン兄弟が紡ぎ出した音楽ドラマ。
というのが表向きのイントロダクション。


しかし普通の音楽ドラマに終始しないのがコーエン兄弟




最初は確かに、コーヒーハウスでのルーウィンのライブをフルコーラス描き彼のアーティストの一面と、そのあと店の裏に呼び出されたルーウィンがわけのわからないいちゃもんをつけられて殴られるという荒んだ生活の一端を垣間見せ、お、結構ストレートな音楽ドラマなのかな?意外にも、と思わせる。


が、キャリー・マリガン演じるジーンがルーウィンに対してクソ味噌の罵詈雑言を浴びせるあたりでコーエン兄弟節が覗く。
イーサン・コーエンの短編集読むと、汚いセリフの応酬がやたら多くて、これがコーエン兄弟のたちの悪いギャグの一つであるのは間違いない。

エデンの門―イーサン・コーエン短編集

エデンの門―イーサン・コーエン短編集



かねてよりコーエン兄弟は、アメリカのトールテールを素材に現代アメリカを神話風に仕立て直す作家だと思ってはいるのだけども、本作もやっぱり神話的エピソードに彩られている。


とりわけ、ルーウィンがシカゴのライブハウスへ行く下りは神話的。
靄のかかった夜の道路、同乗者は足の悪い太ったジャズミュージシャンと無口な付き人。
ルーウィンの苦労など何も知らない同乗者は、彼を導くようでもあり、単に気ままな天使のようでもある。


シカゴのライブハウスでルーウィンが売り込みをかける時の、まるで何か審問を受けてるような空気感も神話の一場面のよう。


全編緑っぽくくすんだような撮影がよりそうしたムードを盛り立てる。


最後に判明する猫の名前から容易に連想できるように、「オー・ブラザー」との繋がりを感じずにはいられない。
音楽を担当するのはどちらもT.ボーン・バーネット。


「オー・ブラザー」は宝物を探すという目的が主人公らの旅路にはあったけども、「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」には目的がなく、より主人公の魂の彷徨、といった趣が強い。


ここまで筋らしい筋のない作品はコーエン兄弟には珍しい気がするが、ディテールは紛れもなくコーエン兄弟節。
堪能。