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船橋リズムセンター

「野に在って野に下らず、俗に在って俗に流されず」。こだわりなし、怒りなし、浅く、ぶれつつ、無着陸、、、

「グランド・ブダペスト・ホテル」を観た!~ウェス・アンダーソンのこだわりが詰まった画面を観る至福

もう1週間も前になるのだけども、ようやくウェス・アンダーソンの新作「グランド・ブダペスト・ホテル」を観てきた。@TOHOシネマズ シャンテ。

ウェス・アンダーソン最新作「グランド・ブダペスト・ホテル」大ヒット上映中!

 

 

前評判が高かったので、期待して観に行く。

実際予告編から漂ってくるウェス・アンダーソンらしいディテールへのこだわりや、豪華な出演者たちを観るにつけ、楽しい気分になってくる。


映画『グランド・ブダペスト・ホテル』予告編 - YouTube

 

 

話は入れ子構造になっていてちょっとややこしい。

現代、小説「グランド・ブダペスト・ホテル」の愛読者が作者の墓を訪れるとこから始まり、時代はどんどん遡る。

1980年代、作家が「グランド・ブダペスト・ホテル」のネタは人から聞いた話だとネタばらしをする。

1960年代、若き作家が「グランド・ブダペスト・ホテル」のオーナーから伝説のコンシェルジュの話を聞き出している。

そして、本作の舞台となる1930年代へとようやく導かれる。

 

 

ウェス・アンダーソンは本作をシュテファン・ツヴァイクからインスピレーションを受けていると公言している。

ツヴァイクは読んだことがないのでわからないのだけども、「マリー・アントワネット」や「メアリー・スチュアート」といった伝記・歴史小説で名高いらしい。

グランド・ブダペスト・ホテル」における時代を遡る構成は、この映画の主人公である伝説のコンシェルジュ、グスタヴ・Hを歴史的人物として配置しようとしているようであり、ツヴァイクの手法を借りてきているのかもしれない。

 

 

グスタヴ・H枕営業も辞さないサービスの徹底ぶりで、彼の勤める「グランド・ブダペスト・ホテル」は盛況を呈している。

ところがある日、常連の顧客マダム・Dが殺害され、グスタヴ・Hに嫌疑がかかる。

彼は汚名をそそぐために見習いベル・ボーイのゼロとともに冒険を繰り広げる。

というような話。

 

 

ウェス・アンダーソンのフィルモグラフィ中では最も娯楽色が強く、オールスターキャストによるサスペンスアクションといった趣すらある。

とはいえ、彼の特色でもある水平の素早いパンだとか、平面的な画面構成、ミニチュア撮影が独特のリズムを生み出していて、いわゆるハリウッドのアクション大作風ではないところが面白い。

スティーブン・ソダーバーグの「オーシャンズ」シリーズなんかと比較すると面白いかも)

 

 

セット、衣装、小道具といった美術全般に、バラライカを用いた東欧っぽい音楽など妥協のない「グランド・ブダペスト・ホテル」の世界観の構築。

1カット1カットこだわりの詰まった画面を観ることの至福。

 

 

これまでのウェス・アンダーソン作品は、疑似家族におけるコミュニケーションのちぐはぐさを悲喜劇的に描いていたけれども、本作でもグスタヴ・Hとゼロとの関係に父子の関係を見出すことはできる。

しかし、本作はそこに留まらないで、娯楽=アクションに開かれていて、そういう意味では、本作がウェス・アンダーソンの集大成というよりは、新たな一歩という感じがしてならない。

物語の背景に戦争を配置して重厚さを感じさせるのも、今後のアンダーソン作品への期待を膨らませる。

 

 

と、まあ、なかなか充実した作品ではあったのだけども、正直それほど手放しに絶賛、とまではいかない。

なんだろう、ここまでディテールが行き届いた作品って、どうも押しつけがましく感じてしまう、というのか。

一度観ただけでは、ウェス・アンダーソンがこの作品に盛り込んだ膨大な情報量を消化できなくて、なんとなく胃がもたれてしまう、というのか。

あまりにアンダーソン流に統制が効いていて、ハッとする瞬間がない、というのか。

「ファンタスティック・Mr.FOX」は一発でノックアウトされてしまったのに、この差はなんだろう?

次回作が気になる映画作家であることには間違いないんだけど。