読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

船橋リズムセンター

「野に在って野に下らず、俗に在って俗に流されず」。こだわりなし、怒りなし、浅く、ぶれつつ、無着陸、、、

ホドロフスキーの「サンタ・サングレ/聖なる血」を観ました!

アレハンドロ・ホドロフスキー監督「サンタ・サングレ/聖なる血」(1989)を観ました。
ホドロフスキーといえば、本作と「エル・トポ」(1969)、「ホーリー・マウンテン」(1973)の3作をして、ミッドナイトシネマの帝王、キング・オブ・カルトムービーと呼んで差し支えない伝説の存在です。
「サンタ・サングレ」以降は目立った活動はなかったものの、昨年日本では23年振りとなる新作「リアリティのダンス」と、ホドロフスキー監督が準備していた「デューン砂の惑星」映画化の裏側に迫ったドキュメンタリー「ホドロフスキーのDUNE」が相次いで公開され、健在であることを示しました。
「リアリティのダンス」は渋谷のUPLINKで観ましたが、決して大きくはないハコにもかかわらず、まあ、圧倒されました。
ちょっと容易く言語化できないな、という感じです。


実は、ホドロフスキー作品って名前は知っていたけどもちゃんと観たことがなかったんです。
学生時代に「エル・トポ」に一度挑戦したことがあったんだけども、途中で寝てしまってほとんど覚えてない。
幸い、TSUTAYAの発掘良品で、ホドロフスキーを代表する3作「エル・トポ」、「ホーリー・マウンテン」、「サンタ・サングレ」を扱ってましたので、借りてきて順番に観た次第。
「サンタ・サングレ」を観て、一応ひと通りホドロフスキー作品は押さえたかな、といったとこです。


ぼくはこの3作の中なら、「ホーリー・マウンテン」が一番わけわかんなくて好きですね。
難解かどうかは割とどうでもよくて、ひたすら狂ったビジョン、グロテスクかつ詩情に溢れたイメージを浴びるようにして観るというスタイルです。
強烈なんですけど、これといったストーリーがあるわけでもないので、ぼくなんかすぐ忘れちゃうんですよね。どんな作品だったっけ?って。
ただ「凄かった」ってインパクトだけが残ってる。
大臣(?)みたいな偉い人がひとりずつ紹介されるエピソードがどれも面白かったです。


で、「サンタ・サングレ」ですが、これは他の2作に較べたら、ずっとストーリーがしっかりしてるんですよ。
ホドロフスキー監督が初めて観客を意識して、商業路線で撮った作品だということです。
ジャンルでいったらサイコスリラーもの。
父の浮気が原因で家庭崩壊した主人公の少年が、精神病院で成長する。
ある日彼の前に母親が現れ、母親と共に芸人生活を始める。
ところが母親は彼を強圧的に支配し、彼は母親の命令で言い寄る女を次々と殺していく、という話。
ホドロフスキー作品で、こんなちゃんとあらすじが書けるなんて、という驚きすら感じます。


ネタバレを構わずしてしまいますが、一言で言ってしまえば本作は、ホドロフスキー版「サイコ」です。
でも、ホドロフスキー監督ならではのグロテスクさは健在。
特に前半、少年時代の主人公が両親とともにサーカスで暮らすシーンは、おそらく本物の、つまりプロの俳優ではない、アウトサイダー身体障害者やらが出てきて、ホドロフスキーらしいケレン味たっぷり。
サーカスの象が鼻から血を噴いて死ぬシーンなど、なんともグロテスクであり、かつ詩情があります。


家庭を顧みない浮気性の父と、カルト信仰にはまってる母性豊かな母とのもとで、両親を愛しながらも、傷つきまくる少年の姿は、おそらくホドロフスキー自身の姿が反映されていんだと思います。
この前半は、自伝的な作品である「リアリティのダンス」と非常に似ています。


ところが後半になると、グッとジャンル映画らしい展開になります。
なんだか原色の照明なんかがビカビカあたったりするし、特に主人公のフェニックスがタトゥー女を殺害するシーンなんか、マリオ・バーヴァあたりのイタリアのジャーロ映画を彷彿とさせます。
オチもきれいについていて、ちゃんとエンタメ映画を観たような充実感がある。
これはこれで面白い。


ホドロフスキー作品観てみたいけど、グロそうで怖いなあ、と躊躇している方がいたら、この「サンタ・サングレ」から観ることをお勧めします。

サンタ・サングレ/聖なる血 <HDニューマスター・デラックスエディション> [DVD]

サンタ・サングレ/聖なる血 [DVD]