船橋リズムセンター

「野に在って野に下らず、俗に在って俗に流されず」。こだわりなし、怒りなし、浅く、ぶれつつ、無着陸、、、

「グリーン・インフェルノ」を観ました!

日本での公開が危ぶまれていたイーライ・ロス監督のカニバルホラー、「グリーン・インフェルノ」をようやく観てきました。

新宿武蔵野館、祝日、14:45の回は立ち見が出るほどの盛況ぶり。
ゲテモノ好きのマニアな客層でもなく、普通の若いカップル客や女性一人の客なども見受けられ、正しい娯楽映画の劇場光景だなあ、と思いました。
 
 

食人族に捕まる

父親が国連付きの弁護士である大学生のジャスティン(ロレンツァ・イッツォ、イーライ・ロス夫人)は、アフリカで女性の人権が蔑ろにされている事実を知り社会活動意識が芽生える。
彼女は、学内で過激な社会活動を行っているアレハンドロ(アリエル・レビ)のグループに参加し、南米で森林伐採のために土地を追い出されようとしているヤハ族を救済する運動を手伝うことになる。
成功裡に終わったと思えた帰り道、グループ全員の乗った小型飛行機が墜落し、生き残ったメンバーはヤハ族に捕らえられる。
ヤハ族は今でも食人の習慣を持つ部族で、メンバーをひとりまたひとりと食していくのだった。
というストーリー。
 
 

緩急考え抜かれたゴアシーン

見所のひとつは、やっぱり容赦ない人喰いシーンのゴア描写であることは間違いないです。
予告でも少し流れていましたが、最初の犠牲者が調理されるシーンはなかなかにエグい。
飛行機の墜落から、続けざまにヤハ族に襲われるシーンもスピーディーな展開の中に、しっかりとゴアな見せ場があります。
 
 
ただ、イーライ・ロスはとてもスマートなので、不快に思うギリギリのところで残虐なカットを隠し、または次のカットへ移ります。
執拗に人体が損壊される様や血や臓物が飛び散るカットはありません。
その辺の緩急は考え抜かれていて、ただだらだらと同じようなゴアシーンを見せるということはない。
最初の食料となる犠牲者が食われる様は丁寧なゴア描写ですが、その後はすでに調理された人体の肉片だけを映したり、蟻責めで拷問したりと様々な趣向を取り入れています。
また、人体が解体されたあとは、必ずヤハ族が手際よく身体のパーツを調理していく様子を映し、彼らの素朴な生活ぶりを印象付ける。
本作では決してヤハ族を狂った人喰い族として描いているのでなく、ただ人喰いの習慣を持つ一部族として描いています。
敵でもモンスターでもない。
異なる文化の人間を、「人を喰う」という一点においてのみ非難することが、モンスター扱いすることができるのか?否、というリベラルな態度が表れています。
だから決して不快なゲテモノ映画ではない。
 
 

エンタメの勘所を押さえた脚本

脚本がかなり王道な作りになっていて、ヒロインのジャスティンが社会活動に興味を持ちアレハンドロのグループと行動をともにするまでの流れ、そんなジャスティンに警告する友人の存在、と「なにか起こるぞ」といった緊張感を保ちながら、実際ペルーに到着してからは少しハメをはずしたようなバカンス感を演出、すんなり入っていける導入。
社会活動グループ内のキャラもその過程でしっかり描き分け、特にジャスティンは誰もが共感しやすい純真なキャラとして観客の拠り所となります。
その一方でアレハンドロはヤハ族に捕えられてからは、徹底的に最低な人間としてかなり戯画的に描かれます。
ヤハ族は悪者ではないので、アレハンドロがその役を担っている。
特にグループのメンバーがヤハ族に捕えられてからは、映画としては「いよいよ人喰いがはじまるぞ」という期待感は高まるものの、ほぼ檻の中で話が進むのでいまいち話が退屈してしまいます。
そこのところを学生活動家グループ内での対立という人間ドラマを持ち込むことで回避しています。
もちろん、いかにしてこの状況から脱出するのかというサスペンスも盛り込んでいます。
エンタメの勘所をきっちり押さえてるので、とてもわかりやすいし、ゴアシーンに拒絶反応さえ起こさなければ、誰が見ても楽しい作品です。
逆にぼくはもっと破たんしててもいいのにと思いましたが。
 
 

食べる、排泄する

でも、イーライ・ロスのやんちゃさは所々うかがえます。
グループのメンバーのひとりラース(「スパイ・キッズ」の男の子、ダリル・サバナ!)がアマゾンの川下り中に「トイレへ行きたい」と突然言い出し、ジャングルの中で用を足すのですが、そこでチ○コが大写しになる。
まあ、正確には彼のチ○コに忍び寄るタランチュラが大写しになるのですが、チ○コまで映す必要があるのか、というね。
この手の下ネタがもう一つ、やはりグループのメンバーであるエイミーが囚われの檻の中でお腹を下して「もう我慢できない」といってメンバーの目の前で排泄します。
エイミー役の女優(カービー・ブリス・ブラントン、「プロジェクトX」に出てるんですね)はよくこの役引き受けたな、と感心してしまいました。
 
 
で、ふと今気付いたんですけど、ヤハ族は「食べる」ことにフォーカスされていて、対する文明人代表の学生活動家らは「排泄する」ことにフォーカスされている。
どちらも生理的欲求に基づくものですけど、このあたりはかなり狙った悪意みたいなものがありそうです。
 
 

楽しいカニバルホラー

ラストは蛇足じゃないかという気もしましたが、まあ、「地獄の黙示録」的な続編を予感させるギャグとして楽しめばよいのかな、と。
全体的には非常にしっかりとしたエンタメ作品であり、決してモンド映画マニアのノスタルジックなB級ホラーではありません。
SNSを利用したデモなど今の時代を巧みに生かしていますし、安易な社会活動をシニカルに諌める視点もあります。
でも、容赦ないカニバルホラーとしても楽しかったです。
 
 
※予告編は閲覧注意(ゴアシーンもあります)